世界と日本の「水問題」
世界的な「水不足」が深刻
世界的な「水不足」が深刻です。国土交通省によると、2000年から2050年の間に、世界全体の水需要が55%増加する見込みです。その結果、2050年には40%以上の人々、つまり39億人が深刻な水不足に見舞われると予測されています。
地球の表面の3分の2は水で覆われており、約14億立方キロメートルの水が存在します。しかし、そのうち使える水「資源」である淡水は全体のわずか2.5%程度であり、しかもその大部分は氷や氷河、地下水などに存在しています。人間が取水しやすい状態の水はごくわずかで、全体の0.01%に過ぎません。
安全な水へのアクセスの不平等が「水不足」の問題の根本です。世界の4分の1の人々が安全な飲料水を得られない状況であり、特に低所得国では水道インフラの不足が主な要因とされています。また、世界の人口増加も水不足の要因となっており、増える人口に対して安全な水の供給量は変わらないため、水資源の分配がますます重要になっています。
「水不足」に気候変動も影響
気候変動も影響しており、異常気象が問題です。水資源は降水量によって変動し、気候変動による大雨や干ばつは、洪水や渇水などを引き起こし、水の利用に大きな影響を及ぼすことがあります。
水に関する問題は、水の所有権や分配においても紛争が発生しています。
東京大学の片山浩之教授は、2050年において浸水被害が拡大する可能性を指摘しています。地球温暖化により海面が上昇すると、低地に位置するアジアの都市が水害に脆弱になる恐れがあります。氷の溶解によるメタンの発生や温室効果ガスの影響も懸念されており、負の連鎖が生じる可能性があります。
水の使い道は主に農業、工業、生活用途の3つに分かれ、特に農業用水が多くの割合を占めています。特にアジアでの米の栽培に多くの水が必要とされています。農業用水は灌漑に用いられ、これは外部の水源から農地へ供給する方法です。
気候変動により降水量が変動し、流域の水源量が減少することで、灌漑水の需要が増えて水不足を引き起こす可能性があります。また、過度な取水や水源の管理不足が水源の枯渇を招くこともあります。
水不足は、人口増加や低所得国の経済発展による食料需要の増加と密接に関係しています。肉消費の増加は牛や豚の需要を高め、それには灌漑用水が必要です。例えば、1キログラムのトウモロコシを育てるには1,800リットルの水が必要です。また、ステーキ200gを生産するためには約3,200リットルの水が必要とされています。水不足が深刻化すれば、食料生産にも影響が及びます。日本は水資源に恵まれていますが、食料の60%以上を輸入しており、食料自給率が40%以下です。したがって、国内での食料生産には十分な水が必要です。
バーチャルウォーター(仮想水)
日本は「バーチャルウォーター(仮想水)」と呼ばれる形で、海外から間接的に水資源を食料として輸入しています。2005年には約800億立方メートルのバーチャルウォーターが輸入されました。これは主に食料に関連しており、日本の年間水使用量と同じくらいです。将来的に人口増加や水不足が進むと、他国の資源輸出も難しくなり、日本への食料輸入に制約が生じる可能性があります。
気候変動の影響により、自然の水量調整が雪解け水に頼る地域でも水不足が発生する可能性があります。ただし、その詳細な条件や頻度は未知数です。水貯蓄のためのダム増設も考えられますが、地形や環境への影響などから容易ではありません。このような状況に対して、東京大学の片山教授は、過去の水の利用方法からの転換が必要であると指摘しています。
水を供給するためのインフラの健全な機能も重要
水の利用においては、水源だけでなく、水を供給するためのインフラの健全な機能も重要です。水道管の老朽化が進み、水道関連の事故が問題となっています。施設の更新が進まないことから、水道管の老朽化が進み、漏水や断水が増加しています。
将来的には水不足の危機的状況に立つ可能性があり、岐路に立っています。片山教授は、協力関係を強化し、必要な水を確保する方法を模索する重要性を指摘しています。
日本では蛇口をひねれば水が出るため、水不足は関係ないと考える人が多いかもしれません。しかし、水道インフラと水の問題は近くにあるものであり、世界の水問題を理解すると同時に身の回りの水にも関心を持つことが大切です。持続可能な水の保護には、鳥の視点で世界の水問題を知ることと、虫の視点で地域の水問題に関心をもつことが必要です。
引用:https://newspicks.com/news/8705608/body/